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【オフィスミギ】晴れ男なものですから

2015年 12月 10日 ( 1 )


小話1

 三軒茶屋で打ち合わせと称した呑みも終わり、歩いて帰るのが面倒なのでタクシーを捕まえた。
運ちゃんとの会話は、クセになっていてこの日も当たり前の様に話しかける。
やさしそうな白髪のおじいちゃん運転手。

「もう、運転手やって何年になるんですか」

「はい、3年ぐらいですかねぇ」

「えぇ、もっと永くやってらしゃるのかと。違うんですか」

「以前は現場監督やってたんですよ、ずうっと」

「へぇ。どちらで?」

「群馬です」

「はぁ、そうだったんですね。」

「現場ではもうお払い箱になっちゃってね、それで東京に来ました。あの仕事は好きだったんですけどねぇ。今は母の介護をしながら一日置きにこの仕事してるんです」

「あぁ、そうなんですね。お母様はおいくつになられるんんですかね」

「九十五です。」

「ぁあ、それは大変ですねぇ」

「最初の二年ほどは本当に大変でしたよ。慣れるまではつらかったなぁ。けど、今は母の介護がわたしの生きがいなんですよ」

「そうなんですかぁ」

「もう痴呆症なんですけどねぇ。一ヶ月に一、二回かな。母がにっこり笑うんですよ。本当に嬉しそうに。」

「ほう」

「それを見るとね、わたしが子供の頃によく見た大好きな母の面影が甦るんですよ。するとねぇ、わたしもあの時分の気持ちになってねぇ、幸せな気持ちになるんです。」

「幸せ、な気持ちですか。なんだか素敵ですね」

「そうですねぇ。今が人生で一番幸せですね」

当たり前の日常を当たり前に生きる。
欲も派手さもないけど、シンプルにずっと継続してきた揺るぎない強さと美しさ。
顔や手のシワ、真っ白な髪を見れば、たくさんの喜怒哀楽を経験してきていらしゃるのだろうと思われる。
だから素敵だと思う。
最近はこういうことに想いが行くよいうになった。
なるほど。
幸せは手に入れるものでもなく、感じるものなんですなぁ、と。

by officemigi | 2015-12-10 01:30 | 小話 | Comments(0)