【オフィスミギ】晴れ男なものですから | |||||
桃太郎がリングに帰って来た! デビューから3戦1RKO勝利を連続し、コーナーで休んだことのない試合を展開。常に3分以内で終了するリングを観るために、応援団は毎回北海道別海町から駆けつけた。 新人王の優勝にも期待がかかったが敗退。 試合後の控え室で天を仰ぎ、不甲斐ない結果にあふれる涙をこらえながら怒号とも罵倒ともつかぬ何処から発しているのかわからない声を出していた。 それからの苦悩は、天真爛漫な桃太郎から信念を貫く闘人に変貌し、新人王を奪われた相手とのリベンジマッチに辿り着いた。 見事に無念を晴らし、やっとの思いで自信とランキングを手にいれた。 年内にはタイトルマッチに挑戦できると周囲の喜びとは裏腹に、ボクシングを離れなければならない事情ができ、故郷の牧場へ戻った。 唖然とした。 あれほど望んだ場所からいなくなる。 一番苦しんだのは桃太郎に違いなかったが、周りの空気も重かった。 夏、shioriはその牧場の傍に出張で出かけた際、桃太郎を訪ねた。 広大な大地で家族で牛の世話をする光景を目の当たりにし、いつ戻って来るのかなどと訊ねる勇気を失う 父さん、母さんの呟きが聞こえてくるたびに益々言いたい一言が遠のいた。 とうとう言い出せないまま帰ろうかとしたその時、駅まで送ってくれた車の中でぼそりと「10月には戻ります」と呟く。 それより早く、練習を再開でき、約1年ぶりのリングは緊張しないわけがない。 相手は桃太郎よりかなり大きく見えた。 しかし、いつものように1R10秒ほどで相手を倒す。 完全復活に喚声が飛ぶがそこからが長かった。まだかまだかとドキドキするラウンドをこなし、7Rロープ際で連打する桃太郎と相手の間にレフリーが割って入り、ストップをかけた。 ほぼ同時に相手のセコンドから白いタオルが投げ込まれ、桃太郎の完勝を示した。 7R53秒、テクニカルノックアウト。 試合前に、 「自信なんかないっす。 それも今の自分らしくていいかな。 リングにあがっても自分らしくいたいな~。」 と言っていた通りの結果になった。 試合後、勝利を祝い握手をした。 牛の世話をしていたあの逞しい手は、本来の役割を果たし、緊張から解き放たれ、ほっとしているように感じた。 久々の拳はとても冷たく、その手をなかなか放すことができなかった。 復活するための覚悟。ボクサーはなんらかの理由で一度リングを離れてもまた戻りたいと願う。 あんなに辛いことはもう2度とできないと頭では思うのだがこころはそれ以上の夢を追う。 必ず帰ってくると約束を果た桃太郎のこれからはもっともっと過酷だ。そんなことは十分わかっている。 しかし、目の前に拓いた道を、父さんが北海道の荒野を開拓した時と同じように真っ直ぐに進むことだろう。 生きるために人は夢をみる。 この言葉を胸に我々も突き進みたい。by shiori
by officemigi
| 2008-02-12 11:24
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