【オフィスミギ】晴れ男なものですから | |||||
ここで書くべきなのか迷ったけれど、知りたい人もいると思うので、ここに記すことにします。 あれから数日がたっても、あたなは自責の念にかられていることだ思います。 2013年8月3日。日本タイトルマッチに敗れたあなたは、9年間のすべてを台無しにしたと言っていたけれど、少なくとも、私にはそうは思えないのです。 あなたは以前、 「志した二十三才の時からずっと時間が止まっている感覚なんです」 と言っていました。でも、チャンピオンになることで、その時間が動き出すと信じていました。そのために、あなたが練習以外にも、毎日欠かさず続けてきていたことは、その時の気づきや、強くなるためのことを、たとえ小さなことでも忘れないように毎日書き記すことでした。ご飯を食べている時でも、あなたは気がつけば、ノートを取り出して書いていた。9年間、ずっとです。何十冊になったのでしょう。他にもたくさん、思うことがあります。 デビューから見てきていた私にとって、あなたがどんな想いで生きてきたのかは、ほんの少しだけ解るような気がするのです。なりふり構わず、命を差し出すような闘い方は、重く心に響いて、多くの人を魅了しました。 あなたが、まだ4回戦の頃です。試合後にレフリーの福地さんが私に、こんなことを言ってくれました。 「この子は上にいくよ」 とても嬉しく思ったものです。 だけど、前のめりになって、誰よりも生き急いでいるように見えたのも事実でした。切なくなるほどに、頂点だけを求めていた。その不器用な生き様が、あなたのボクシングでした。 ゆえに、そうした激しい闘いを重ねてきた結果、もう随分前から身体は悲鳴を上げていたはずです。念願だったタイトルマッチは、減量失敗という事態に。あなたが最初に倒された時、完全に意識を失っているようでした。それでも、ふらつく足取りで立ち上がり、セコンドに″止めるな″と合図を送っていました。そして、目を見開いて、何かを大声で叫んで、向かっていった。精神と身体が空回りしたままで。そして1ラウンドKO負けという、あまりに無念な結果になってしまった。 あなたはこの「事実」に対して、あらゆる批判に、黙って耐えなければならないのでしょう。 だけど私は「真実」を、このように感じるのです。 身体は、あなたの意志に逆らい、それを断ち切ることでしか、その身体を守ることが出来なかった、と。 これ以上、深いダメージを背負うのは、あまりに危険だった。もし、身体が強いモチベーションに従い、最高のコンディションで、チャンピオンに挑んでいたとしたら、あなたは、どんな危険を犯してでも、命と引き換えにしてでも、求めていたのもを手にしようと、闘い抜いてしまったことでしょう。だから、減量の失敗も、1ラウンドで終ったのも、そういうことだと思うのです。 試合前、後楽園ホールの前で、いつも応援に駆けつけるあなたのお母さまとご兄弟のお二人と会いました。皆、なにかを察していたようです。お母さまが言っていました。 「あの子の願いが叶ってほしい気持ちはあります。だけど、なにより無事に終ってくれたら。」 私は、あなたに、9年間闘ってくれて、そして、最後に惨めな結果になろうとも、あなたを守ってくれた大切な身体に、最大限の感謝をして欲しいと思います。そして、この9年間に、胸を張って欲しいのです。 これからは今までとは真逆で、誰かのために生きてみるのもいいかもしれませんね。 幸せだと心から思えた時に、止まっていた時間は、ゆっくり動きだすと思うのです。 あなたは、私の著書の中で、最後の現役ボクサーでした。 心に響く瞬間を何度も見せて頂きました。 本当に感謝しています。 最後のあの叫びは、9年間の想いのすべてだったと。 あなたが生きてきた証だったように思います。 忘れられない瞬間でした。 ありがとう 光矢。
by officemigi
| 2013-08-11 01:30
| BAD LOSER
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Comments(2)
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by
mimi
at 2013-08-16 22:01
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はじめまして。生きるために人は夢を見る。心に響きます。
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officemigi at 2013-08-17 10:31
mimiさん ありがとうございます。光矢に対していろんな批判はあるけれど、彼はそれを全部受けいれようとしている。
わかってほしかったのは、彼が一番辛い思いをしているということでした。 ブログはくだらんことも書いてますが、よろしくお願いします。
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