【オフィスミギ】晴れ男なものですから

BAD LOSER 崖っぷちのギャンブラー

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 男は言った。

「俺、違法カジノでファイトマネーの200万全部擦って、地方に逃げたんです。その前にも友人とか欺いて全部で1000万の借金してて。全部ギャンブルでした。19の時、ばあちゃんが教えてくれたんです」

 小学生の極真空手の王者で、プロデビューは1998年、ヨネクラジムから。殺るか殺られるかのファイトでB級、A級トーナメントを制した元日本Sフェザー級のランキングボクサー。男は小澤大将という。彼は瞬きせずに真っ直ぐこちらを見据えながら続けた。

「4回戦の頃は喧嘩の延長でした。俺の力を示してやるっていう。ボクシング、なめてた。不良ボクサーとかいわれてたけど、坊ちゃんボクサーでしたね。後援会もあって喰うための仕事をしなくてもよくって、練習はしてたけど、あとは遊び惚けた。ギャンブルにハマって1日で400万儲けて、狂ったように豪遊して1週間で使い切ったり。儲けた金は全部使切りゃなきゃ気が済まなかったんです。試合2日前にも行ったこともありました。賭け事って、緊張して集中するから減量の空腹感がごまかせるんです。計量前日までタバコも吸ってましたね。俺、才能あるって言われ続けたけど、こんなんじゃチャンピオンなれるはずがないですよね。」

 小澤は真剣にボクシングに取り組んだことがなかった。ある意味、才能だけで勝ってきた。様々なことがあり小澤は2階級制覇の戸高会長と巡り会う。

「初めて戸高会長と会った時、あの瞬きしない目で見るんです。正直えぐられてるって、怖くて会長の目見れなかったです。世界チャンピオンとしてはもちろんですけど、人間として尊敬してます。会長に心を寄せてからやっと解ったんです。会長の凄とかかっこよさとか。人生で初めてこの人についていきたいと思いました。会長は言葉じゃなく、後ろ姿で示してくれるんです。俺もそういう男になりたいんです。俺、口ばっかりだったから。言葉じゃなくて行動で示したいです。もう調子いい言葉はいらないと思ってるんで」

 小澤は最近まで半年間ジムを離れた。
 しかし、それは今までの逃げとは違い、徹底して自分と向き合っていた。
 解体の仕事をしながらもロードワークは欠かさず、今までになかったぐらい身体を鍛え抜いた。ハードなトレーニングをしながら散々だった過去を振り返り、本当に求めているものを時間をかけて確認していった。精神的に苦しい日々だったが、導かれるようにひとつの答えに辿り着く。

「今回が最後だなって思うんですよ、運まかせの人生も。ボクシングが生きるパワーを与えてくれてるんです。ボクシングやってるっていうより、やらされてるって感じがするんです。なんていうか、見えない何かに動かされてるような。だからここで最後に真剣にボクシングやってチャンピオンにならなくちゃいけないなって思うんです。俺が裏切った仲間たちのためにも。連絡とれなくなってしまた母も、チャンピオンになったらきっとみつけてくれると思うんです。頂点に立つことで自分のやってきたことを清算したい。ボクシングが自分の人生を救ってくれるって解っるんで。もう気持ちは東南アジアのボクサーくらいにハングリーですよ。もうただ単にのうのうとボクシングだけやってるお坊ちゃんとは違うんで。」

 小澤の生い立ちは多くの悲しみに溢れていた。
 小さい頃、母親の記憶もほとんどなかった。
 仲間を家族のように思ってしまうのも、ギャンブルに身を投じてしまったのも、良くも悪くも枠にとらわれず本能のままに生きたのは、それを振り払うためだったのかもしれない。
 多くを失った小澤にはボクシングだけが残されていた。
 喜びも、悲しみも、失敗も、常にギリギリで走り続けた男は、本物の「賭け」に出る。

「俺、本質はギャンブラーなんですよ。絶対に辞められない。ただお金とか、そいういものにはもう賭けないですよ。崖っぷちにいる自分を徹底的に磨いて、ボクシンに、その先の人生にすべてを賭けたい。それが最高のギャンブルだとやっとわかったから。」
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by officemigi | 2013-06-18 10:03 | BAD LOSER | Comments(0)
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