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【オフィスミギ】晴れ男なものですから

光矢

覚えていないけれど、ちょっと昔の話です。


彼がまだ4回戦の頃です。
(ボクサーとして新人の頃)

ある試合で光矢くんは勝負に勝ったにもかかわらず、

悔しさと情けなさのあまり、控え室で泣きじゃくってたことがあった。

そんな選手はあまり見かけたことがなかった。

普通ならば、反省することがあるにせよ、

勝って生き残ったことにとりあえず安堵するものだが、

光矢くんは違った。

わんわん泣きながら、声にならない声で、

自分に言い聞かせるようにこんなことを言っていたと思う。

「すいません、

こんなんじゃ上にいけないです。

次は絶対いい試合します。」



そう、こんなこともあった。

数年前の東日本の新人王の決勝で、

試合に出場するボクサーたちのコメントが入場のときアナウンスされた。

ほとんどの選手が勝って新人王になるというような月並みのコメントだったが、

光矢くんだけが、世界チャンピオンになります、と言い切っていた。


みんなそうなんだろうけれど、ボクシングに賭ける想いが伝わってくる。



黙っていれば男前だけど、喋らせると天然ボケすぎて、

まぁそんなギャップも魅力な奴です。



光矢くんのボクシングは彼の性格そのもので、

真っ向勝負の倒し倒されのどつき合いで、

危なっかしいけれど、つねに輝きのあるファイトをする。


華がある。


勝負に賭ける気持ちが強すぎで空回りし、前のめりになりながらも

あくなき前進を続け、死んでも構わないというような

光矢くんの闘いっぷりは観るものに、

その彼の意気込みが、ずしりと伝わってくる。


その純粋さや真っ直ぐさが、

なんだか生き急いでるように感じることもあって切なくなるときもある。



ボクシングって、その人の生き方そのものが、

闘うということで表現される、と思う。



2010年9月4日

日本ライト級タイトルマッチ


地元の愛媛から大応援団がかけつけた。

やんちゃだったという光矢くんが、ボクシングという世界で、

ついに日本一の座をかけて挑むのだ。

毎回試合に来るお兄さんは心臓が破裂するんじゃないかぐらいに、

緊張していたようだった。

大一番に挑む弟に、

少しでも力になりたいという兄ならではの思いからなんだろう。

試合ぎりぎりまで、祈るようにそっと光矢くんに付き添っていた。
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いつも笑顔で明るい、ちょっと天然のお母さんは、

大応援団の真ん中で、ぽつりと座っていた。

息子が必死で求め続けたものを、成就させてあげたいという気持ちと、

どうか無事であってほしいという願い。

昨年亡くなった夫の遺影を大事に抱えながら、

兄同様、祈るように一緒に見守っている。


三迫会長、久保マネージャー、

ずっと指導してきた射場トレーナーも、

名門ジムの復活にこの一戦に賭けていただろう。


久しぶりのタイトルマッチに僕自身もかなり緊張したようだ。

チャンピオンになる瞬間に立ち会えるかもしれない。

そう思うとカメラの重さなど吹っ飛んでしまう。

けど、そう簡単には勝たせてもらえないです。

試合は5R KOで負でけてしまいました。

チャンピオンは光矢くんの気迫あふれる猛攻に最初は戸惑いつつも、

憎いくらいに冷静に対応していた。

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力んでいる光矢くんの打ちおわりに、

的確なパンチを打ち込む。

すべてが渾身のパンチを振う光矢くんにカウンターぎみに入るので、

かなり効いているように感じた。

ただ、この試合に賭けた思いは半端じゃない。

冷静になれというのも、もっとずるくなれというのも酷だろう。

愚直なまでに、真っ直ぐに打ち合う。

これがある意味、光矢くんのスタイルだ。

いつもなら、その天性の勢いと勝負に対する強烈な執着で逆転するのだが、

やはりチャンピオンになる人は何かを持っている。

正直いって強かった。

光矢くんはなんで試合が止められたのかわかってなかったようだ。

どうして?なんで?

を少し繰り返していたが、抱えられてコーナーに座った時、

打ちのめされたことをようやく悟ったようだった。


立ち上がり、母や兄や愛媛から駆けつけた応援団に顔を向けると、

グラブで顔を覆い、震えながら声を上げて泣いていた。
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試合前の光矢くんのブログにはその思いがこう書かれていた。



俺、 リングの上で死んでもいい。

それぐらいのものを背負って9月4日を迎える。

東京きて約5年、上京初日にプロの方とスパーリングし

血まみれにされたところからスタートしました。

ボクシングルールでのスパーなのに、自分のパンチがあたらず、

歯痒くて蹴りをだして、会長にこっぴどく怒られました 。

それからデビュー戦、KO負け。

自分の弱さに嫌気がさし諦めかけた時期もありました。

そんな時支えてくれたのは 回りの人達のサポートでした。

ほんとに感謝してます。

僕がベルト(チャンピオンになる)をとることで、

みなさんに少しでも恩返しができればと思います。





光矢くんは、まだ諦めない。

by officemigi | 2010-09-06 00:03 | 林建次の日々 | Comments(0)
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