【オフィスミギ】晴れ男なものですから

小話4

湘南台で働いていた19歳の頃、期間工のおっちゃんから聞いた話。

たぶん、おそらく、よくある話。


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「僕は父が死んでも悲しむことはなく、涙することもないだろう」


幼いころから兄は弟によく言っていたものだ。

兄弟は専制君主の父からそれぐらい酷い仕打ちを受けてきたのだ。

弟は兄のその考えを聞いて少し悲しくなったが、

それも仕方のないことだと思った。


父は母と別れて地位も威厳も失ってひとりぼっちになった。

病気にもなってすっかり弱っていた。

息子二人に会いたいという父に弟は応えようとしたが、

兄はまったく相手にしなかった。

弟は兄のその態度に悲しくなったが、

それも仕方のないことだと思った。


春を過ぎたある日、父は独りで亡くなった。

急なことに弟はこれまでのことを後悔した。

そして、わずかながらでも父とのあたたかな時があったことを想い出した。

弟は父の葬儀に来ないという兄にすごく悲しくなったが、

それも仕方のないことだと思った。


後日、弟は父の部屋に飾ってあった小さい頃に撮った家族写真を持って兄に会いに行った。

兄は無表情で写真を受け取ると、深いため息をついて背を向けるだけだった。

しかし、弟は兄の部屋に家族写真が飾られるようになったのを知って

それはとてもしあわせなことだと思った。


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by officemigi | 2017-03-20 01:27 | 小話 | Comments(0)
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